「プライバシーを守りつつ光あふれる空間を丁寧に計画する」
地方都市の中心市街地に位置する、夫婦と3人の子供達のための住宅です。施主は、何処にいても家族の雰囲気が感じられつつ、子供たちそれぞれの空間の確保が出来ること、大きなLDKや南面からの採光がある光あふれる家を希望していました。
敷地は北側には川が流れ視界が開け、南側は道路に面し採光が良い環境である一方で、東側には4階建ての鉄骨造のビルが、西側は月極駐車場と保育園があり不特定多数の人が往来や車通りも多く、一般的な住宅地とは異なる周辺環境にありました。
そこで、私たちは建物の配置や内部のつながり、窓の位置の工夫によって、プライバシーを確保しつつ光あふれる空間や、背後の助任川との関係性を実現させることを目指しました。
建物は、全体として道路境界から少し下げた位置とし、西側に寄せた南北に長い2階建ての部分と、その中心から東に延びる平屋とすることで、南側に駐車場を、川側に子供たちが安心して遊ぶことができるプライベートな庭を確保しました。西側と南側は比較的閉じた立面とすることで外部からの視線を制御しつつ、北側や東側は助任川に大きく開いた開口部や採光を考慮した開口部を計画しました。
建物の中心に位置するLDKは吹抜のある大きなひとつながりの空間として設計し、南東面の2階の外壁の大きなFIX窓から採光することで、プライバシーを確保しつつ光あふれる場所を実現しています。スキップフロアのような形とすることで、リビングからは川面が望め、吹抜に配置された家具と一体になった木製の片持ち階段あわせてた上下の動線を計画しました。
東の平屋部には子供室が配置され、南側の目隠し塀で、視線を遮りながら光が差し込むように計画しました。3つの子供部屋は、撤去可能な造作の収納で緩やかに間仕切ることで、将来的に大きな一室の空間としても使えるように工夫しました。
内部の仕上げは白のAEP塗装とし、光を増幅するように設計した一方で、外部の色は周囲の街並みと合わせた薄いグレーに統一しました。軒裏をシルバー塗装にすることで、川面の色や光を反射させ、空に溶け込むような屋根としています。
この住宅が、周囲の環境と調和しつつ、光あふれる穏やかな落ち着いた生活の場となり、家族のこれからの時間を受け止める器になってもらえればと思っています。